金融資産運用のアドバイスに一歩踏み込むには

金融資産運用のアドバイスに一歩踏み込むには

  先日CFPの受験に向けて頑張っていらっしゃるFPさんとお話しをしていたときに、
「金融資産ってむずかしい。言葉もむずかしいし、計算もむずかしい」という感想を聞きました。
FPさんで、金融資産運用のアドバイスに、いまいち自信が持てない、一歩踏み込めないという方もいらっしゃるかもしれません。

筆者は証券会社で27年間、ほとんどを株式市場に関わる仕事をしていました。
その期間は、バブル崩壊後、日経平均株価が20,000円を割る時に業界をスタートし、卒業の2019年は23,000円と日本株の長い低迷時期を経験した期間でもありました。
この様な経験の筆者から、アドバイスに一歩踏み込めるように、ヒントとなる事をお伝えしたいと思います。

【執筆者】
嶋田 哲裕 氏 CFP認定者
株式会社L&F 代表取締役

国内大手証券会社、欧州大手銀行系証券会社と27年間の証券業界経験をもって2019年に、50歳で独立開業。
金融商品を販売しない、お客様側に立つアドバイザーとして、お客様の夢や希望を叶えるサポートを行っている

 

金融機関などでの経験がないから・・・

「金融機関などでの経験がないから、自信が無いんです」という声を聞くことがあります。

でも、FPとして6分野を学んだあなたは、十分に知識は持っているはずです。
実際に、6分野全てで、実務の経験がある人は少ないと思います。

ところが、いくつかの分野は誰でも実務の経験を積むことができます。
そして、実は、金融資産運用もその1つなんです。

では、どうすれば経験を積めると思いますか?

そうです、あなたが、自分で実際に資産形成、資産運用を行う事です。

すると、口座の開設から、NISAの手続き、積立商品の選定、積立方法の開始、株式の銘柄選び、株式の発注方法など、たくさん経験することができます。

1年もすれば、金融市場の動きも体験できますし、保有してみるとFPとしていろいろ調べたくなってきて、さらに知識も深まると思います。

どうでしょう?是非、いろいろとトライしてみて下さい。

 

自分を知ろう!

さて、経験がないから踏み込んだ提案やアドバイスを躊躇してしまうという、あなた。

実は、まだ何も運用商品を購入した経験がないのではありませんか?

もし、そうだとしたら、何があなたにブレーキをかけているのでしょうか?

「投資信託は元本保証じゃないから」ですか?
「どのくらい利回りが出るのか分からないから」でしょうか?

何か自分にブレーキをかけている考え方などがあると、自信を持ってお客様にアドバイスをするのがむずかしくなりますよね。

自分にブレーキをかけている部分を知って、それをまずは自分で解決してみてはどうでしょうか?

その解決策が、投資信託についてより深く知ることや、経済状況や金融市場についてより深く知ることにつながる動機になるかもしれません。
その結果、自分も行動が進んで、それが、さらに自信を持ってお客様へアドバイスできる事につながっていくかも知れません。

そして、自分での経験はあるのだけど、お客様に説明するのには一歩踏み込めないという、あなた。
同じように、自分の中で、なにが踏み込めないと感じさせているかを探って下さい。

ぜひ、自分を躊躇させているものや、踏み込めないと感じさせている何かを探して、それを解決することにも目を向けてみて下さい。

 

目標とする利回りが得られるか心配・・・

利回りが保証されていない投資信託などで、積立運用をしても、想定した運用の利回りが得られるのか心配という声も聞かれます。
確かに、そうですね。利回りは保証されていませんので、不安ですよね。

投資信託の場合でも、過去の実績に基づいた平均リターンは把握できますが、それはあくまでも過去のものなので、未来を保証するものではありません。

金融商品仲介業者や投資助言・代理業者でないFPさんの場合は、各資産の割合をどのようにポートフォリオで保有するかという事までのアドバイスになりますね。

ですので、各資産の期待収益率がどのくらいあるのかを把握することになります。

この際に、参考になるのが、我らが国民の年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオです。その中に、各資産の期待リターンが記載されています。
https://www.gpif.go.jp/topics/Adoption%20of%20New%20Policy%20Portfolio_Jp_details.pdf

  各資産の運用を、インデックス運用とする場合には、これを参考にできると思います。
世界で一番大きい年金資産を運用しているところの運用方針の元になっているものですから、十分にお客様への説明にも使えますし、説得力もあります。
また、長期投資や分散投資に関しても説明資料に使える内容がありますので、参考にしてみて下さい。

https://www.gpif.go.jp/gpif/diversification1.html
https://www.gpif.go.jp/gpif/diversification2.html
https://www.gpif.go.jp/gpif/long-term-investment.html

 

目的を明確にすることにフォーカスを

FPさんには、釈迦に説法かもしれませんが、大切なのは、「どうして資産運用、資産形成が必要なのか?」という目的、ゴールが明確にすることです。

資産運用という点だけにとらわれすぎないように、本質を忘れないことが大切だと思っています。
低金利の下で、銀行にそのまま置いておくと全然貯金が増えないということで、資産運用とか積立投資の相談に来る人も多いでしょう。
銀行に置いてあるお金を増やしたいと、どうして思っているのでしょうか?
積立投資で資産を増やしていきたい目的は、いつまでに、いくらを目標にしたいのでしょうか?

ここがまず1番大切なポイントだと思います。これが分かれば、必要な積立の金額や、必要な目標利回りなどを提示することができます。
そして、その目標利回りを得るために、どの資産をどういう割合にするのかを提示することができます。

 

ネットワークを活用してみては

そして、最後ですが、FPに必要なものは専門家などとのネットワークだと言われます。

お客様の問題を解決するために、金融資産運用の話はあまり得意じゃないという場合、ネットワークの中に得意な人とコラボするという考えもありますね。

ただ、丸投げというわけにもいきませんので、自分でベーシックな部分は話せるように、ぜひ、一歩踏み込んだ話をできるようになって下さい。

以上