成功者によるFP独立体験談:独立して生き残るために必要なこと

成功者によるFP独立体験談:独立して生き残るために必要なこと

ファイナンシャルプランナー(FP)として独立の体験談として、 日本FPアドバイザーズ協会の幹事でFPオフィスケルン代表の佐藤さんの事例をご紹介させていただきます。

==== あなたが今、FPでの独立を考えているのに一歩を踏み出せずに悩んでいるとしたら何が行動を止めていますか?

  • 売上を上げていくことができるだろうか?
  • 自分の生活費を賄えるほど稼げるだろうか?
  • 集客をし続けることができるだろうか?
  • 差別化して事業を軌道に乗せられるだろうか?
  • もし食えなかったらどうしよう・・・

こんな様々な不安や悩みを抱えている のかもしれません。

そんなあと一歩を踏み出せずにいるあなたへ参考になればと思い、自分の体験談を踏まえて、「独立して生き残るためには、これを必ずしっかり考えておいた方が良いこと」をひとつだけお伝えしたいと思います。

私の独立の経緯やきっかけについても、触れていますので、「将来、ファイナンシャルプランナーの資格を活かしたい人」や「将来、独立開業も視野に入れている人」には、特に読んでいただきたい記事です。  

1.私の独立までの経緯

私は現在千葉県船橋市で独立系FP事務所(ファイナンシャルプランニング事務所)を経営しています。
まずはここまでの経歴に触れておきたいと思います。

私は大学卒業後に大手ハウスメーカーに就職し、住宅展示場での住宅営業を皮切りに地主への賃貸住宅の建築営業、土地を仕入れて分譲地へと開発していく分譲地開発業務を経験しました。

その後、総務課に異動になり、住宅ローン取次、損害保険代理店業務、登記取次業務、経理業務、工事原価管理などを経験し、約15年の勤務を経て退職しました。


敢えて経験した業務を細かく並べてみましたが、当時は異動になるたびに「なんで自分ばかりこんなに異動させられるのだろう」なんて感じていました。

というのも当時の私の勤務先ではひとつの業務を長く担当することがほとんどで、私ほど部署を点々と変わっていくのは珍しいことでした。
今なら会社からの期待の表れだったと捉えることもできます。

そして独立して約10年やってきた今となっては、それらの経験が全て今の自分に繋がっていて感謝しかありません。


私の場合、ハウスメーカーを退職した時点で自分の中では「独立」が視野に入っていました。

ただ経験を自分なりに棚卸ししたときに「住宅」以外の経験も積みたいと一旦、相続コンサルティング会社へ転職をしました。


ここでも相続に関する様々な事例に触れ、相続税申告や遺言書作成など具体的な業務も経験でき、これも独立後に相続の相談を受ける際にとても役に立ちました。

この会社では親族で揉めている生々しい事例も目の当たりにしましたし、コンサルティング会社のビジネスモデルを知ることも出来ました。


そして相続コンサルティング会社を退職後、2012年4月にFP事務所を設立し独立をしました。  

2.そもそも独立を考えたきっかけ

私が独立を意識し始めたのは、ハウスメーカー時代に住宅ローンの取次業務を担当していた時です。


私がやっていた住宅ローンの取次業務とは、営業担当が商談を進めていく過程で銀行にお客様の住宅ローン審査を出しますが、なかには審査に通らず商談が進められなくなるお客様もいます。

そんなお客様を営業担当から一旦、預かって住宅ローンを借りられるように状況を整理し、他の銀行に打診していくことやフラット35の取次店業務を担当していました。


フラット35は勤務先のハウスメーカーが取次店になっていたこともあり、申込や審査対応から融資実行に至るまで自分は銀行員ではないかと思うほど毎日毎日住宅ローンに向き合っていました。

当時所属していた支店ではフラット35の融資実行件数が多い月で20件~30件、通常の月でも平均10件前後はありました。


ひとりで担当する数としては他の業務もあることを考えるとかなり多かったと思います。 フラット35以外にも営業担当から預かっているお客様の対応もあり、また営業担当自身から案件についての様々な相談もあり、また住宅ローンを提案するためお客様との商談に同席することもありました。

そんな役割でしたから営業担当が自身の自宅を建築する時も住宅ローンの相談を受けることがありました。独立を考え始めたきっかけも実はそんな相談の中にありました。  

3.日常業務の中にあったちょっとした興味がきっかけに

いつも表彰されている営業成績優秀なAさんという先輩の営業担当が自宅を建築することになりました。


Aさんはいつも自分のお客様へは銀行の変動金利を勧めていて、フラット35を提案することはほとんどありませんでした。

ところが自分が借りる時には、迷わずフラット35を選んでいました。
もちろんどこで借りようが自由なのですが、お客様へは変動金利を勧めているのに自分は全期間固定のフラット35を選択していることに興味を持った私はAさんにその理由を聞きました。

その時、Aさんはこう答えました。 「変動金利なんて怖くて借りられないよ。多少金利が高くても固定金利でしょう。

お客さんへは金利を安く見せたいから変動金利で話はするけどね」
Aさんを非難するつもりはありません。

自分も営業時代、同様の発想があったことは否定できません。 営業の最前線で他社との競合にさらされているときに他よりも少しでも有利に見せたい、お客様の想定より高すぎる見積金額や金利は見せたくないと思うのは営業マンの心理です。


それが本当にプロとしての提案かどうかはさておきですが。  

4.売り手からではない買い手への情報提供があっても良い

自分の営業時代のことは棚に上げても、こういった心境になる営業担当からのアドバイスだけで安易に住宅ローンを決めてしまうお客様にある意味「悪知恵」を注入してあげたいと思うようになったきっかけがAさんとの一件でした。

まれにご自身で勉強されて、営業担当より詳しく知識や情報を持っているお客様がいることも事実です。
そんなお客様を担当する時、営業担当は本当によく気を使い、勉強をして対応します。言い換えれば、お客様に鍛えられる瞬間でもあります。

お客様が賢くなると営業担当も賢くなり、より良い提案に繋がる可能性があります。
そうであるならお客様にも営業担当の提案を鵜呑みにしないで選択できるような環境を提供する「買う側のサポート」があっても良いのではないか?と思い始めた瞬間でした。

それでもそう思い始めて実際に独立をしようと決心するまでには、まだまだ様々なストーリーがあるのですが、字数の関係で今回は省略します。  

5.独立をして生き残るのにまず必要なのは自分の強みを明確にすること

独立を考え始めたきっかけが住宅ローン業務であり、家を買うお客様に後から失敗したと思うような選択はしてほしくないという想いもありました。


同時に不動産取引全般に言えますが、売り手と買い手の情報量の差や経験の差が大きいのもこの業界の特徴だと感じていました。

インターネットで様々な情報が入手できる現代ですが、それでも「うちの場合はどうなの?」という個別事例についての明確な回答は特に不動産関連はインターネットでは得づらいものです。


私の場合、独立するのは稼ぎたいとか有名になりたいという目的は全くなく、「家」を買って後悔してほしくないという想いでした。

それを実現するには自分が家を販売する側にいては、100%買う側の立場ではアドバイスは出来ないと感じていたこともあります。


やはり家を売って利益を得ている立場では、目の前に買いたいと言っているお客様がいるのに「あなたの状況を考えると今は買うのは辞めておいた方が良いですよ」とはなかなか言えません。

ですので、私の場合は「FP」で独立したいというよりは「住宅コンサルタント」のような「家」に特化した形で独立したいと考えていました。  

6.「家」と言っても守備範囲は広すぎて

ただ「家」に特化すると言っても営業時代の経験で間取り図を描くことや提案することも出来ましたが、私は建築士ではありません。
宅建資格も持っていましたが、不動産会社をやりたいわけでもありませんでした。

でも家を買う人をサポートしていきたいという想いだけはありました。「家」をサポートすると言ってもそもそも幅広い分野です。


そこで考えて行きついたのがやはり「住宅ローン」でした。

住宅ローンについてなら単純にどこの金利が安いというレベルの話ではなく、相当数の審査対応をしてきたこと、特に一度は銀行で断られたお客様の審査結果を何度も覆してきた経験もあり、様々な銀行とやり取りをしてきたこと、様々なレアケースの案件を手掛けてきたこと、住宅ローンに付随する登記や火災保険などもかなり手掛けてきたこと、実はそこら辺りの銀行員よりも住宅ローンについては詳しいという自負もあり「住宅ローン」に特化しようと考えました。

他にも自分のそれまでの経験から「住宅ローン」に詳しくない営業担当が多いこともそこに特化しようとしたひとつの要因です。


さらには銀行も住宅ローンに詳しくない人が住宅ローンを担当しているケースが少なくないという状況を目の当たりにして、家を買おうとする人の周りには、実は住宅ローンに詳しい人がいないという状況にチャンスを感じたという側面もあります。

そして自分の強みが明確になってくると住宅ローンを専門にするならFPと名乗るのが分かりやすいのでは?という発想からFP事務所を名乗ろうと考えました。

そして「住宅ローン相談専門 FPオフィスケルン」という名前の事務所を立ち上げます。


少し脱線しますが、事務所名に付けた「ケルン」とは、登山道に石を積み上げて作る道標のことを言っており、「相談者の人生の道標になる仕事をしたい」という想いから付けました。 話を戻しますが、結果的に「住宅ローン専門」と謳ったことが功を奏しました。  

7.「住宅ローン」に特化したことで良かったこと

「住宅ローン専門」と謳うことで数あるFP事務所の中でも住宅ローンやマイホーム購入を検討している方がわざわざ選んできてくれるケースが増えていきました。

最初こそ「近いから」という理由で相談に来られている方も少なくありませんでしたが、近くに別の事務所もあるけれど、やはり住宅ローンのことを相談したいから、マイホームの予算のことを相談したいからと遠方から選んでいただけるようになってきました。

そして「住宅ローン」の相談からそのまま購入をサポートしてほしいと展開するケースも出てきました。
まさに自分がやりたいと思っていたことです。

そして想定外だったことは、そうやって相談に来られて、マイホーム購入をサポートしていく過程でお客様を通して、工務店や不動産会社が私のことに興味を持ってくれて、自社の見込客の相談も対応してくれないかと連絡を頂くケースがあったことです。

でももともとは買う側をサポートすることを目的に始めた事務所です。販売側が興味を持ってくれたとしても最初に必ず先方に伝えていたことがあります。


それは「相談は喜んでお受けしますが、相談の結果、今は買わない方が良いなと感じるケースでは、はっきりそうお客様へ伝えますが良いですか?それでも良ければ」ということです。

「むしろそうしてほしい」という所とのお付き合いがその後も続いているという状況です。
実際にとても家計収入も高いし、工務店は何とか契約したいと考えていたお客様も相談の結果、あまりに家計の内容が悪すぎてまずはその改善からとアドバイスをして、計画を中断してもらったケースもあります。

強みを明確にしておくことのメリットの別のエピソードもあります。
実は途中で「住宅ローン相談専門」という看板を「マイホーム購入相談専門」と変えてみたことがあります。

他の要因もあるかもしれませんが、目に見えて問い合わせが減りました。
しばらくそれで頑張ってみたものの昨年から再び「住宅ローン相談専門」に戻したところ相談が戻ってきました。  

8.あなたの強みが明確になれば必ず独立はできる

長々と私のことを書いてきましたが、ひとつだけ言えることは「強み」を明確にし、その強みをベースに事業を考えればFPとして独立は必ずできるということです。

私の場合は「住宅ローン」でしたが、あなたの経験を棚卸ししてみてください。


できれば単に「詳しい」というだけではなく、どんなに限定的な分野でも他の分野や他の人よりも経験が豊富なものがないか考えてみてください。

保険業界が長いとしても保険の中でも得意な分野や好きな分野、こういったケースは強いよというものがあるのではないでしょうか?


逆にFPとして「資産運用」をアドバイスできる事務所を始めたいという構想だけは決まっているとしたら、そもそもなぜそう考え始めたのか、そこに考えが至る過程に必ずあなたの強みと関連する出来事があったのではないでしょうか?

FP事務所なら全ての分野を満遍なく対応できる事務所でありたいと考える人もいることでしょう。


もし全てに対応できるとしてもその中でも一番の強みだと思う分野に特化して始めることをお勧めしたいと思います。

それが結果的に相談者の目につきやすくなる近道だと感じるからです。  

9.特化することのさらなるメリット

「マイホーム購入相談専門」と変えたら反応が落ちたと書きましたが、私なりの解釈は相談者の目には「不動産会社と差別化できなくなっていた」のではないかということです。


特化することでのメリットはその分野に詳しい事務所と見えることで相談者に選んでもらいやすいということもありますが、出版社やサイトの運営会社から執筆の依頼がくることも増えてきます。

実際に私もHPを経由して、いくつかのサイトの執筆の依頼はもちろんのこと金融雑誌の住宅ローンについての1年間の連載を担当させていただいたこともあります。


残念ながら雑誌自体が休刊になり、2年目はありませんでしたが。 執筆だけではなく、テレビで取り上げていただく機会もありました。

商業出版につながるきかっけも特化したことから掴めました。特化することで仕事が広がっていくメリットがありました。


もし次の一歩が踏み出せずにいるのなら、今一度、自分の強みを見つめ直してみてはいかがでしょうか?

あなたにしかできないこと、あなたの自信につながるものが必ず見つかるはずです。


執筆 FPオフィスケルン 代表 佐藤 陽