この記事はFPとして相談業務を始めたいと考えている方や、スタートして課題に直面しているという方に向けて書いています。
FPとして相談にのることになると、あなたのアドバイス次第で相談者の人生を変えることになるほどの重要な立場になります。
従って、相談者の目標達成や悩みの解決するためには、なるべく早く実践的な価値のある知識を吸収していくことが求められます。
私自身は、オーストラリアでFPの資格を取得後、現地での業務やFP関連に関する様々な業種を経験することができ、この経験自体はとても役立っているのですが、一方で、かなり大回りしたという想いと、今から振り返ればもっとこうしておけばよかったということもたくさんあります。
あなたにとっても相談者にとっても時間は有限で貴重なものであることから、この記事では、回り道を最小限にして最短でスキルアップをしていく方法についてお伝えしたいと思います。
【執筆者】
FP相談事務所 代表 藤本 崇
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP認定者
宅地建物取引士
FP技能士会代表幹事
不動産会社勤務を経て2003年にオーストラリアへ。
2004年に現地のファイナンシャルプランナー資格を取得。
オーストラリアで独立系最大手のグループでFPとして従事する。
以後ファイナンシャルプランニングを土台とした、住宅購入、住宅ローン、資産設計、保険等各分野で実務経験を重ね、延1000名以上の相談にのっている。
日本とオーストラリアの経験を活かしながら、ご相談者にとっての「本当の正解」を見つけるお手伝いをさせていただくことを最大の目標としている。
目次【FPとしてスキルアップが必須なわけ】
あなたのアドバイスによって相談者の人生が良い方向に変わることになれば、どれだけの価値があるでしょうか。
逆に悪い方向に変われば、あなたのアドバイスに価値はあるでしょうか。
相談者と向かいあって相談にのることは、大きな価値を生み出すことができる機会であると同時に、とてつもなくマイナスの影響も与えかねないため大きな責任を伴います。
従ってスキルアップを可能な限り迅速におこなっていくことが必須であることはいうまでもないでしょう。
そのためには自分の目指すFP像を早くみつけ、それにあったスキルに集中して学び実践するサイクルを早くすることです。
みなさんはFPとして活動するために、まずFPの資格試験に合格するということを目指すかもしれません。
資格の取得は基礎的な知識を得てスタートラインにたったようなものです。
しかし、実務上では試験の点を取るためのスキルは使わないものも多く、実践的な積み重ねこそが価値ある提案へとつながっていくことになります。
専門性を持つということはとても大事ですが、一方でFPとして偏りすぎずに俯瞰的に視野を広げていくということも留意しておいた方がよいでしょう。
FPとして本来は6分野にまたがって横断的な視点からアドバイスすることが求められますが、一つの分野にかたよったり、不得手な分野を中途半端にアドバイスすることによって、結果として相談者にとって最善の提案とならなかったり、大きな不利益につながることにつながりかねません。
FPとして答えられないことがあると相談者を失望させてしまうという心配や相談につながらないという切実な状況が生まれるかもしれません。
そのために早くスキルをアップするには以下のことを考慮していただければと思います。
【FPとしてのスキルアップの早道】
1.目標とするFP像を明確にする
まずは、どのようなFPを目指したいかを決めましょう。
目的地が定まるとそれに向けた具体的なステップを踏むことができます。
これはファイナンシャルプランニング自体も同様ですね。
例えば私がいたオーストラリアでは、FPは資産設計のアドバイザーという印象が強かったですが、日本では保険をイメージすることが強いかもしれません。
また、報酬体系もコミッション報酬、フィー報酬などそれぞれでFPにも様々な立ち位置の方がいて方向性もそれぞれです。
従ってそもそもFPはどのような形でサービスを提供し、どのように成り立っているのかを情報収集してみましょう。
どのようなタイプのFPがいるかを情報収集するには、FPが集まっている場所で聞いてみるのが早道です。
2.目指す方向に最も近い環境に身をおく
どのようなFPを目指したいか定まってきたら、目指す方向に最も近いと考えられる環境に身をおくことを目指しましょう。
どのような職業の経験でもその経験は間接的にFPとしての業務に役立つことはありますが、直接的に必要でないことにも多くの時間を費やすことになるでしょう。
また、1人で考えていると自分のキャパシティーの中で堂々巡りになってしまい、課題に直面し遅々として進まないということもよくあります。
目指す方向の環境にいれば、同じような課題の多くはすでに経験され克服されていることも多く、共有する場があれば解決までの時間を短縮することができます。
3.目指すFPにどのようなスキルが必要かを学ぶ
人は環境に大きく影響を受けます。
その環境に身を置けば、どのような活動をして、どのようなスキルが必要か見えてきます。
FPとしてどの部分の専門知識や情報が重要なのか、目標の共有方法やコミュニケーションの取り方、サポートの内容など多々あります。
目標とするFPとしての必要なスキルを絞ることができれば、集中的に最短でそれを学んでいくことができます。
4.実践を短期間で繰り返す
成長スピードを速めていく上で実践の頻度はなにより重要といえるでしょう。
座学の勉強をするよりも、実務で必要性に直面し、学んだことをすぐにアウトプットしていくことがより早く成長することにつながります。
座学の知識は忘れていきがちですが、直接相談者と向きあってアドバイスをすることになれば、必要性や本気度がおのずと変わり、そのために得た知識や経験は深く定着していくものになります。
従って、可能な限り実際の相談に数多くのり、その解決のために全力をつくすということがFPとしてのスキルをあげていく早道になるでしょう。
実践という面で、これから始めるという方で誰も相手がいないようであれば、本番と同じ状況を想定して家族や友人にまずは実際にFP相談を行ってみてみるとよいでしょう。
実際にやってみると様々な足りない点や課題に気付くことになります。
なるべく数多く相談の実務を積むには、目指す形で相談を行っている会社に入って経験を積むのが早いでしょう。
中にはインターンのような形で受け入れる会社もあります。
一旦会社に入るとなかなか他の会社のやり方をみることが難しくなるので、ある会社の運営方針や方法に接することができる機会は貴重といえます。
また、現在FPとは直接関係のない会社につとめているのであれば、FPとして勉強した知識をもとに、会社に対して福利厚生のような形のアドバイスとして場を他の従業員に提供できないかという提案をしてみてもよいかもしれません。
経験を積んで信頼を得ていけば、FPとして報酬を得ることを許可してもらうことなども可能になるかもしれません。
今は兼業が広がりつつありますが、問題がないようであれば会社のブランドのないところで、トライしながら実践を積み、相談に対してのフィーをいただき、感謝してもらえるレベルにしていくことを目指していくのもよいでしょう。
何より実際の相談者の声を多く聞くことができれば、FPとしての相談を継続していくモチベーションになると同時に、相談者が目標とする人生に近づくことのサポートができていることを実感し、FPとしての充実感や達成感を味わうことができるでしょう。
5.まだ、足りない部分は他の専門家と協業し、提供レベルを一気にあげる
同時に自分のスキルアップを図りつつ、相談者の満足度の向上を図る
アドバイスをしていく上でどうしても足りない知識がでてくることがあります。
時間的に許せば自分で学ぶことは大事ですが、ファイナンシャルプランニングは、広範囲に及ぶことからすべてを深く掘り下げるまではかなりの時間を要します。
一方で相談者はFPが時間をかけてすべて整えるまで待っている余裕はないでしょう。
自分のサポートの幅を広げて、知識を得ながら相談者の満足度を図るために、他のFPや専門家と協力するということは、一足飛びに問題を解決するための方法の一つです。
特定の分野は他の専門家と共同でサポートすることなどは、時間と労力、専門性といった点から最初から選択肢として組み入れておいてもよいのではないかと思います。
自分の得意分野以外の専門家との協力の中で経験を得ながら徐々にできることをふやしていくのがいいでしょう。
他のFPや専門家と協力する際に重要なのは、相談者からの信頼を得るためには自分と理念や方向性が一致している人ということになります。
解決までに時間がかかりそうな時でも、違う専門家からの視点や考えを聞くことができれば、一気に解決に向かったり、よりよい提案ができたりすることがあります。
そういった客観的な助言が得られる環境に身を置くこともスキルアップには大事で、相互にサポートしながら高めあうことができる関係性ができればそれ以上によい環境はないでしょう。
【独立のためのスキルアップ】
ある程度経験を積んで方向性が固まってくると、次のステップで本当に自分のやりたいことをやるために独立ということが選択肢に入ることになるかもしれません。
ただ、ビジネスの現実は思いとは別にあり、しっかりとした仕組みとサービスを構築しなければ、あっという間に手元資金が底をつきかねません。
従って相談者を獲得するためのマーケティングは、ビジネスを維持していく上で最も重要な要素の一つといえます。
いざ、独立してビジネスを展開していくということを決断すると、例えば会社員であれば営業という担当だけでよかったものが、事業主として経営、企画、広報・マーケティング、IT、経理などやることが格段に増えてきます。
各分野は重要ですが、それぞれに時間を投入することになると、どれだけ時間があっても足りず、本来最も大事な相談業務に時間があてられないという本末転倒な状態が生まれかねません。
そういった事業の運営上の悩みを気軽に相談できる場や相手を是非持っていただければと思います。
回り道をせずにスキルアップを早くしていくためには、目指している方向に合致する環境でビジネスを行っている人がいる場所に身をおくのが一番早いです。
そしてそこでの成功事例を学び、すぐに実践していくことの繰り返しをどれだけ早く進められるかが成長速度を決めます。
そんな都合の良い環境は簡単には見つからないと思うかもしれませんが、最後に一つお伝えたいと思います。
手前みそにはなりますが、当日本FPアドバイザーズ協会は相談者の利益のために最善をつくすという理念に賛同したFPが集まり、手をあげて幹事となった方が、ボランティアベースで、勉強会や交流会を主宰しています。
当会は、この理念を実現するためにはフィーによる相談が不可欠と考えています。
会員の中にはずいぶん長く有料相談をベースとしていたり、有料相談のみで活動を続けている先輩FPがおり、外部ではなかなかきけない経営や運営面、相談時の悩みなどの機微のある内容にもざっくばらんに答えてもらえることがあります。
これは高い理想を目指してお互いに学び合って共に成長していこうという意識で積極的に参加していただいている方が多いからということがいえると思います。
一般的な知識よりも、例えばFPとして、
〇どのような理由でどのような報酬形態にしているのか
〇どの範囲のサポートを提供しているのか
〇具体的なアドバイスの提供方法はどうしているか
〇実務でどのようなFPソフトやツール、資料を使うか
〇集客方法はどうしているのか
〇相談時に回答に困るケースの対応はどうしているか
など、どれ一つをとってみても一人で自分の形を構築してくまでには、かなりの時間を要する可能性があるものです。
在籍している多くの先輩FPは、こういった知見を長く蓄積してきて、時に失敗し修正しながら現在にいたっています。
方向性が同じであれば、同じような課題に直面する可能性は高く、すでにこうした課題を経験し実践している人からのアドバイスを得ることができれば、無駄に遠回りすることを避けることができ、一足飛びで進むことがあります。
当会は実務を行っているFP自身が、FPとして相談業務をしていく上で実践的な内容を学び合う場としてあり、フィーによる相談を目指すFPの方にとっては、気づきやヒントを得ることができる貴重な場所となっています。
そして何より重要なことは、これらの活動を通して、相談者の目標の達成や課題の解決へより高い付加価値を提供し最善を目指すことです。
興味を持っていただいた方は大歓迎いたしますので、ぜひ一度覗いてみてください。
【まとめ】
「FPとして有料相談をするために、一足飛びにスキルアップする方法とは?」
というテーマで記事を書いてきました。
〇目指すFP像を明確にする
〇目指す方向に最も近い環境に身をおく
〇そこで目指すFPにどのようなスキルが必要かを学ぶ
〇その必要なスキル集中して、実践を短期間で繰り返す
〇まだ、足りない部分は他の専門家と協業し、提供レベルと範囲を一気にあげて、
自分自身のスキルアップも図る
そのことによって相談者の満足度の向上を図る
時代の変化のスピードがますますはやくなる中で、顧客本位が求められる時代になりつつあります。
相談者から「相談して本当によかった」といっていただけるレベルでお話しができたときは、本当にFPをやっていてよかったと思える瞬間だと思います。
その瞬間を目指して切磋琢磨してお互いに学び合い、共に一足飛びにスキルアップを目指していきましょう!