2018年10月14日(日)より24日(水)まで11日間、アメリカのFP大会(NAPFA)に参加の為米国を1年ぶりに訪問した。
FP大会参加は私にとって今回で12回目。
今回の同行者は8名。最初訪問地はNAPFA開催地、フィラデルフィアで4泊。
Vanguard社
2日目 先ず初めの訪問先は、フィラデルフィアに本社がある世界有数の運用会社Vanguard社。
フィラデルフィアの中心地から40-50分離れたその敷地は芝生と木々があふれ、ところどころに池もある広大な敷地に16もの大きな建築物が散在し、建物間は車で移動しているようだ。まるで大学のキャンパスのよう。
実際に彼らのパンフには”Campus”と書かれていた。
その敷地で働く社員は計16,000名。
これだけの人が車で朝夕行き来するのだから出勤(退社)時は、交通渋滞だ。
Vanguard社での研修は、9時から5時まで7人の社員の方から、Vanguard社の歴史、Financial Adviser サービスの具体的内容、Marketing概要、直接商品販売の概要などの説明があった。
同社の預り資産額は2007年に14億㌦だったが、2018年には51億ドルへの大躍進ぶり。
昼食を御馳走になったが、まるでホテルのビュッフェスタイルのランチ風景。オーダーでその場でもクッキングもしてくれる。
途中、話はしなかったが同社前CEOとすれ違った。彼は毎日朝5時に出社し、社内にあるジムで健康増進をしているとか。
最も私が関心を持ったのが、年齢別に4つに区分けしてリスク許容度を決めている点。
40歳まで リスク性商品 90%
41歳―65歳 50% 株式, 50% 債券
66歳-72歳 年齢と共に株式の割合を50%~30%
72歳以上 株式は最大30%まで
と決めていること。勿論これ以外にリスクを判定する尺度はあるが、基本は年齢としているとのことだ。
NAPFA 2018 Fall Philadelphia
さて3日目から5日目までは、今回目的の”NAPFA 2018 Fall Philadelphia”大会。
朝08:00から、夜18:00まで。私は今回、Keynoteスピーチ4つを含め、全部で15のレクチャーを受講した。
NAPFAとは「National Association of Personal Financial Advisors」の事。会員は全部で2,400名、内約500名が参加した。
カンファレンスは例年5月には中西部、10月には東部で開催される。どちらも同格。
Internationalではないので、多分外国人は私たち一行のみ。だから目立つ。
費用の関係もあり通訳が付く訳でなく、ひたすら講師の英語に耳をそばだてる。
大会2日目はフェアウェルパーティー。皆さん緊張がゆるむ一時。
開催場所のホテル自慢の料理がビュッフェスタイルで出てくる。アルコールも弾む。
バンドもにぎやかに、そしてフロアーではダンスに興じる。
大会3日目は昼で終了。心底ほっとする瞬間。
夕方ニューヨークに移動する前にフィラデルフィアの歴史遺産を見学する。
米国独立、奴隷制の廃止、合衆国内の国民性と自由において最も親しみのある象徴の一つである「自由の鐘」のある資料館を訪ねた。
そして、アムトラック特急列車でニューヨークへ。
NYSE
FP大会開催地のフィラデルフィアからアムトラック特急列車で約1時間半。いよいよNY。
話が戻るが、興味深いのが白タクの利用方法。フィラデルフィアで空港から出て、ホテル行をどうしようかと 考えていた時、同行の氏がやおらスマホを取り出し、白タクを呼び出すと数分でその車が目の前に来た。
それは配車サービスのリフトと言う会社とのこと。
同業ではウーバーは度々耳にしているが初めてのこうした体験。
ホテルまで3人で30㌦プラスチップ。仮にその時タクシーを利用すれば、ドライバーに行き先ホテル名を伝え、到着後料金を払わねばならないが、このウーバー方式はまずクレジットカードを登録してあるのでその場での支払いはなし、行き先も呼び出し時に目的地を入力しているので言う必要なし。
つまり、運転手と一言も会話をしなくて終了してしまう。
ちなみにタクシーを利用すれば料金はその倍以上とか。
安くて、早くて、その場での支払いはなし。 米国滞在中、この白タクには度々お世話になった。
いずれ、日本にもこの方式が入るだろうが、日本では業界保護と安全確保の為、白タク禁止なので法律の改訂が必要となる。
さてNY2日目は午前中ニューヨーク証券取引所(NYSE)見学。
実は今回同行の氏の伝でやっと見学が可能になった。
私も2006年 初めてのFP大会に参加した折、NYSEを見学した。
この時は身分保証人がいれば2階の見学コースに入れた。
しかし、現在は「911」の後、 益々警護が厳重になり、関係者でなければ入れなくなった。
それが今回は何とトレード・フロアーへ。
お馴染みの丸い島のようなところで、男性がじっとモニターを見ている。
現在NYSEの扱い高は東証の約6倍。年間3,000兆円が動く世界経済の中心だ。
全体の9割はコンピューター処理されるが、残り1割は機関投資家から大口注文が来ると、その人(マーケット・メーカーという)は、板を見ながら小分けにしてボラティリティ(振幅)を大きくしないように発注するとの事。
その日の午後、同行の氏の伝で某総合研究所エコノミストの米国経済の見通しの研修の機会を得た。
米国経済は「政治リスクは続くも、景気拡大は過去最長へ」との基本論調。
米中貿易摩擦の影響度は、そもそも米国の貿易依存度は 国際的に見ても低く、伝えられるような下げ程にはならないだろうとの見解であった。
Francis Financial FP事務所
いよいよ9日目の月曜、NYのFrancis Financial社を訪問。
同社は米国FP事務所の中でもニッチな離婚や未亡人の女性客を対象にし、女性客が7割とのこと。
離婚はFP単独で支援できる訳でもなく、法律の専門家と協同して進めるとのこと。米国においては全家計資産の中で、女性の占める割合は52%と女性の資産額が多いということだ。
社長のStacyさんは各種メディアに登場する有名人であることから、成長は今後も続くものと思われる。
その他特記事項
土日が入ったので、各自NYの町の観光を楽しんだ。
2001年9月11日ワールドトレードセンターに飛行機が突っ込んだ同時多発テロは、母国本土が外国に攻撃されたことのない米国にとっては恐怖と怒りであったはずだ。
その現場には今、6棟の建物が建ち、最も高い建物は高さ1,776フィート(約541m)とのこと。
1,776とはアメリカ独立記念の年。 現場には911記念堂があり、地下に降りるとひしゃげた大きな鉄骨、旧建物の基礎跡、押しつぶされたクレーン消防車などが残されている。
更に犠牲となったハイジャック犯を除く2,753人の顔写真が祭られた部屋がある。
特に消防士は救助に当たっていた最中のビルの崩れの為、343人の方がなくなった。
まだ生まれていない胎児も何人かいた。日本人も富士銀行行員初め20数名が 犠牲となった。
米国のIT大手アマゾンは直販もする。
NYに新しくできたアマゾンブックス(書籍店)に入ってみた。
普通本屋と言えば本棚に縦に並んで陳列してあるが、ここはそうではない。
横置きに並べられている。アマゾンは3000万冊以上の在庫を持っているはずだが、この書店にあるのはほんの一握り。
つまり、この書店ではアマゾンが集めたビッグデータの中から売れ筋のベストセラー 本が並べてあるらしい。
勿論、キャッシュレスだ。
最後は空港搭乗待合室。
と言えば長々と椅子が並んだ光景を思い出すが、NYの空港で見た風景は違う。
搭乗口半分のスペースが オフィイスのようにタブレットが並び、スマホや電子機器の充電ができるようになっている。
その隣には、軽食コーナーがあり、オーダーはタブレットに入力するだけ。支払いは手元にある、カードリーダーでスライドさせれば終わり。
登場待ちの時間も惜しんで通信やら、情報を集める米国の底力を見る事が出来た。
以上で2018年秋、NAPFA大会出席とそれ以外の訪問先の状況、更に進んだアメリカの一端を報告しました。
【執筆者】
小林 治行(CFPⓇ 投資助言業)